信じてきたなんて、嘘でした。
わたしがこの状況に耐えていれば、わたしさえ何もしなければ、いま以上に酷いことなんて何も起こらないで、このままの状況がずっと続くなんて、嘘でした。
わたしはそんな状況を信じてなんていませんでした。
わたしはそんな状況を願っていたのです。これ以上酷いのは嫌だから、怖いから、願っていたのです。
『わたしは何もしないから、何をされても大丈夫だから、だから、もうこれ以上酷いことが起こりませんように』と、願っていたのです。
わたしが信じていたのは、もっと別なことで、もっと馬鹿らしくて起こるはずのないことでした。
わたしはずっと、心の底では誰かがわたしを助けてくれると信じていたのです。

(みんなわたしに酷いことをするけれど、そんなの本当は本心じゃなくて、きっと、周りがやっているから一緒にやっているだけなんだ。本当はわたしに酷いことなんてしたくないんだ。その証拠に、何もしていない人だっているじゃないか。この状況を、ただただ傍観している人だっているじゃないか。
助けてくれる。いまにきっと、誰かがわたしを助けてくれる。
それで、わたしはみんなと仲良くなって、いままでわたしに酷いことをしてきた人たちは後悔することになるんだ。わたしと同じ思いをするんだ。)

馬鹿でした。考えが浅はかでした。
誰かが助けてくれるなんて、そんなこと起こるはずないのです。

わたしを助けてくれるのは、わたししかいないのです。
わたししかわたしの気持ちはわからないのです。
もしもわたしがわたしの気持ちを、声や文字で伝えても、所詮は他人事でしか考えられないのです。
言葉でいくら分かったつもりになったって、その人の気持ちなんてその人にしか分からないのです。
だから、わたしのことを一番わかっているのはわたしで、わたしのことを助けてあげられるのもわたししかいないのです。
わたしのこの悪夢を終わらせる方法なんて、ずっと一つしかなかったのです。


わたしは大きな声を出しながら、こっそり家からもってきた包丁を片手に持って、教室内を無我夢中に走り回りました。
近くにいた女の子の腕を傷つけました。その近くで呆然としている男の子の頭を刺しました。
わたしは必死でした。赤い血は目に入りませんでした。
後ろを振り返る余裕なんてなくて、背中に感じるたくさんの視線も、ざわめきもどうだってよかったのです。怖くて、怖くて、どうにかして何かを変えたかったのです。



不幸な夢が明けるとき
(わたしを助けるには、わたしが何かをするしかありませんでした。)



(終わり!)(どうしてこうワンパターンものしか書けないのでしょうか…)2008/01/11










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