彼女は苦しそうだった。いつまでも苦しそうだった。


彼女は苦しそうだった。朝から晩まで、日が暮れるまで泣いていた。


彼女は苦しそうだった。そりゃそうだろう、と僕は思った。 だって、この世で一番愛しい人が目の前で殺されてしまったのだから。


彼女は苦しそうだった。泣きながら彼の遺体を抱きしめて、とめどなく涙を流した。


彼女は苦しそうだった。彼の服を脱がせて首にかぶりついた。流れ出た血を啜っていた。口のまわりが赤に染まっていた。あぁ吸血鬼みたいだ、と僕は思った。


彼女は苦しそうだった。思う存分血を飲んだ後、ナイフとフォークを上手に使って彼を解体していった。


彼女は苦しそうだった。解体した彼を次々と口に運んでいった。どうやら彼女はカニバリズムに目覚めたらしい。


彼女は苦しそうだった。一つ残らず彼を口に運んだ後、彼女は両手で顔を覆ってすすり泣いた。


彼女は苦しそうだった。いつの間にか彼女の涙は止まっていた。だんだんと彼女の泣き声が変わっていったのがわかった。唄、だ。


彼女は唄っていた。ひたすらに唄っていた。涙はすっかり乾いていた。彼女はただ唄うだけだ。壊れたように、ずっと。



終わらない唄を唄おう
(それは酷く滑稽な喜劇だと思った)



(終わり!)(あっちゃー)(明るいの書きたいです)













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