「ねぇ、」

「……え?」


僕が優しい声で語りかけても、彼女は上の空の返事しか返してくれない。もうさっきからずっと。まるで僕が独り言を言っているような状態になっている。どうして僕の目をみてくれないんだい?どうして上の空なんだい?今は僕と二人でいるのに。どうして僕以外のことを考えているんだい?ねぇどうして、君はただ空を眺めているだけなんだい?


「ねぇ、」

「………」

「どうして、そんなに悲しそうなの?」

「……わからないの?」


震える声で彼女が聞いた。わかっていたら聞いていないんだけど。僕はそう思ったけれど、そのことは言わずに、ごめん、と言って彼女を見つめた。彼女の視線はまだ広い空を見つめたままだ。真っ黒な雲で覆われている、夕方の空。


「お父さん、お母さん…、どうして、」


泣きそうだ。僕じゃなくて彼女が。でも彼女はなかなかに涙を零さない。いっそ零してしまえばいいのに。そうしたら僕だって少しは慰めようがあるのになぁ。今のままじゃ、慰めるどころか僕がここにいることさえしらないだろう、君。


「お父さん、お母さん…!!」


あぁ君はその言葉ばかり繰り返すね。ここにいるのは僕なのに。どうして他の人の名前を出すのかなぁ。


「おと…、っさん、お…かぁ、さん……!どうし、て。…だれ?だ、れが…こ、ころしったの?」


やっと泣いてくれたね。でもこれじゃあさっきと何も状況が変わらないよ。君は相変わらず僕のことを見てくれない。僕がいるじゃないか。お父さんやお母さんなんかよりも、僕のほうが大事だって言ってくれたじゃないか。君のお父さんとお母さんは、僕と君の事を認めてくれなかったじゃないか。君は酷く怒っていて、お父さんとお母さんなんていらない!私にはあなたがいればいいの、と言ってくれたじゃないか。

だから僕が殺したのに。こんなことになるんなら、殺さなければよかった。ねぇ、泣かないで。僕を見てよ。そっちは空だよ。ほら、雨が降ってきた。ねぇ、お願いだから僕を見て。


「っ…おとう、さん。おか、さ…ん」


…あぁもう、



そんなに悲しい顔をしないで



(終わり!)(ギャグかきたいね!)











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