「ただいま」

帰ってくるなり姉さんはソファーへ飛び込んだ。気合を入れたのか服は滅多にはかないミニスカートだった。「亮くん?お姉ちゃんが帰ってきたよぉ」赤らんだ頬に酒臭い息。気合の入った服装と合わせて考えると、多分合コンか何かにいってきたんだろう。「おかえり。合コンは楽しかった?」僕はソファーに寝転がっている姉さんを覗き込む。「えー…あんまかっこいい人いなかったよぉ。気合いれなきゃよかった」多分こういいたかったんだろうが、酔ったせいで姉さんの呂律は怪しくて僕には言葉として聞き取れなかった。「そう、残念だったね」「本当だよ〜。はやく彼氏ほしいのになぁ」そう言って姉さんは足を上下にばたばたさせた。「彼氏?まだ探してるの?姉さんモテるから、ほっといても向こうからよってくるじゃない」「そうだけどぉー、みんなかっこわるいんだもーん」「僕がいるじゃない」そういうと姉さんは足の動かすのをやめて、「うー」と少し唸った。

「亮くんはかっこいいんだけどみんなに、彼氏なの、って自慢できないじゃない?この年でまともに彼氏がいたことないって異常よ」「中学校の頃にいたじゃない」「そんなの子供のお遊びよ」「高校の頃の背の高い人は?」「あの人はかっこよかったけど、結局三日で別れちゃったし」「それは残念だね」姉さんは僕の科白の白々しさに気付いたのか「そんなこと思ってないくせに」と僕を睨みつけた。けれどそれはただの上目遣いにしかなっていなくて、とても可愛らしかった。「思ってるよ」「嘘つき。大体、別れたのだって亮くんのせいじゃない」「僕が?何かしたっけ?」「覚えてるくせに。亮くんが相手の子をぼこぼこに殴ったんじゃない」「そうだったっけかな」惚けたふりを続ける僕に、姉さんは「もう知らない」と言ってソファーに顔を押し付けた。さっきまで足を動かしていたせいで、スカートが捲れてそこから赤い下着が覗いていた。「怒らないでよ」そういいながら姉さんに覆いかぶさると「やめてよ」といわれた。少し傷ついた。「姉さんは、僕よりもそういうかっこいい人の方がいいの?」「……そういうわけじゃないけど。 亮くんだって彼女がほしいって思うでしょ?」「彼女?そんなの考えたことないな」「嘘だ」「本当だよ。僕には姉さんがいれば十分だもの」「……そう」うつ伏せの姉さんを無理矢理ひっくり返す。酔ったせいかはわからないけれど、瞳が潤んでいた。「姉さんだって、僕がいれば十分だろ?」首に口付ける。返事は返ってこなかった。「姉さん?姉さんは僕を捨てるの?」「…そんな言い方卑怯だわ」「そうかな」「そうよ。あたしが亮くんを捨てられるわけないでしょう? あたしには亮くんしかいないんだから」僕がにっこり笑うと「キスして」と姉さんはいった。結局、僕には姉さんしか、姉さんには僕しかいないんだ。なぜって、僕らは愛し合っているからさ。



仮面舞踏会で愛を囁く
(「お風呂はいったら?」僕がそういうと「いやよ。だって亮くん一緒にはいってえっちなことするでしょ?」と言われた。ばれたか)



(終わり!)(近親相愛でございます)(ちなみに語り部くんが弟)2007/05/26








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